外国人留学生/高度外国人材の採用に関する企業調査<2017 年 12 月調査>  

2017年12月19日
ディスコは、全国の有力企業を対象に、日本の大学または大学院に留学する外国人留学生の採用実態を中心に、日本で勤務する高度外国人材(大学卒以上)の採用や活用、課題等を調査し、分析しました。(調査時期:2017年11月27日~12月5日、回答社数:611社)

【調査結果】

1.外国人留学生の採用(新卒)
[1] 外国人留学生の採用状況
調査に回答した企業のうち、大卒以上の高度外国人材の雇用経験をもつ(または雇用予定のある)企業は 63.2%。高度外国人材雇用企業のうち、2017 年度(2017 年 4 月~2018 年 3 月入社)に外国人留学生を「採用した」企業は、予定を含め全体の 35.4%。また、2018 年度(2018 年 4 月~2019 年 3 月入社)の採用を見込んでいる企業は 57.8%に上る。
従業員規模別に見ると、2018 年度の採用見込みは、すべての規模で 2017 年度の採用実績を上回り、半数を超える。特に、1000 人以上の大手企業において伸びが大きい。
また、製造業・非製造業別で見ても、両者とも採用見込みが実績を上回る。2018 年度の採用を予定している企業は、製造業 58.0%、非製造業 57.6%で、いずれも 6 割近い。高度外国人材の採用は企業属性に関わらず、一般化してきた様子が見て取れる。

[2] 外国人留学生の採用規模と属性
2017 年度に外国人留学生を採用した企業に採用実績を尋ねた。採用人数の分布を見ると、「1 名」という企業が約半数を占め(48.5%)、「2-3 名」(35.1%)とあわせると、全体の 8 割強が 3 名以内に収まる(83.6%)。平均人数は 3.81 名。従業員規模別では、大手企業で 8.18 名と、全体平均の 2 倍以上に上る。大手企業の中には、大量採用している企業も見られる。
 最終学歴を見ると、「文系(学部卒)」50.5%、「理系(修士課程了)」29.9%の順に多く、「理系(学部卒)」23.7%、「文系(修士課程了)」21.6%までが 2 割超。博士課程については 1 割を下回る。
 入社後の配属先について、「日本での勤務」と回答した企業は 88.7%。日本勤務の割合は年々増加しており、2015 年度(82.8%)に比べ 5.9 ポイント増。外国人留学生に対し、日本国内での活躍を期待する企業が増えていることがわかる。

[3] 外国人留学生を採用する目的と、求める資質
外国人留学生を採用する目的を文理別で尋ね、前年調査と比較した。文系では「優秀な人材を確保するため」が最も多く約 7 割(71.0%)と、前年より 6.9 ポイント増加した。割合は多くないものの「日本国内の新卒採用だけでは充足できない数的補完のため」が約 10 ポイント伸びている。理系でも「優秀な人材を確保するため」が圧倒的に多く約 8 割(79.7%)。前年より約 10 ポイント増。
外国人留学生に求める資質については、文系・理系とも「コミュニケーション能力」が1位(文系 62.9%、理系 50.3%)、「日本語力」が 2 位(文系 51.2%、理系 48.5%)だった(データは次ページ)。
優秀であるのはもちろんのこと、外国人である強みを活かしつつ、日本語でのコミュニケーション力を発揮できる人材を求めていることが読み取れる。

[4] 外国人留学生に求める日本語力
企業は外国人留学生に対し、どの程度の日本語コミュニケーションレベルを求めているのだろうか。
文理別に内定時と入社時に分けて尋ねた。
内定時にビジネス上級レベル以上(レベルの目安は下表参照)を求める企業は、文系 55.1%、理系 47.6%だった。これが入社後には文系 85.8%、理系 79.1%と大きく増える。採用時すぐに必要というわけではないが、入社後に仕事を進める上でかなり高い水準の日本語力を求める企業が多いことがわかる。
多くの企業が入社後には幅広い場面での日本語による適切なコミュニケーション力を求めており、外国人留学生にとってそのハードルは決して低くないと想像できる。

[5] 外国人留学生の出身国(地域)
外国人留学生の出身国(地域)を、2017 年度の実績と今後に分けて尋ねた。2017 年度の実績が最も多いのは「中国」(62.6%)。ただし今後については 50.8%にとどまる。一方、「東南アジア」は、2017年度実績は 32.3%だが、今後採用したいと回答した企業は 75.4%に上り、高いニーズが読み取れる。
「東南アジア」の詳細を見ると、特に「ベトナム」が高く、2017 年度の実績で 19.2%、今後採用したい企業は 32.8%と 3 割を超える。

[6] 2018 年度の募集・採用方法
今後の募集・採用については、全体の約 8 割(81.3%)が、「国内の日本人学生と同じ枠で募集・採用」と回答し、別枠での採用(一部別枠含む)は 2 割弱(18.7%)にとどまる。

[7] 外国人留学生を採用したことによる社内への影響
外国人留学生の採用実績のある企業に、採用したことによる社内への影響を尋ねた。
好意的な影響として多くの企業が選んだのは、「日本人社員への刺激・社内活性化」「異文化・多様性への理解の向上」で、ともに 6 割を超える(66.3%、61.6%)。
一方、外国人留学生を採用することにより社内で起きた「問題」としては、「言葉の壁による意思疎通面でのトラブル」が最も多く(68.6%)、「受け入れ部署の負担増」51.4%、「文化・価値観、考え方の違いによるトラブル」48.6%と続いた。前年調査と比べ、全体的にポイントが増加傾向だが、特に言葉の壁によるトラブルのポイント増が目立つ。こうしたことから、P5 で見たように、多くの企業が外国人留学生に対し高い日本語コミュニケーション力を求めていることが推測される。

2.海外大学卒の外国人材の採用(新卒・中途問わず)
[1] 海外大学卒の外国人材の採用状況
ここからは、日本以外の国や地域(海外)の大学・大学院を卒業した外国籍社員の採用状況について見ていく。
高度外国人材雇用企業のうち、2017 年度に「海外大卒の外国人」を採用したと答えた企業は 20.1%。
前年調査(18.9%)より 1.2 ポイント増加した。海外大卒の外国人材の採用は 2013 年度から増加傾向が続いていたが、前年調査(2016 年度採用)は国内学生の採用スケジュール大幅繰り下げで企業の負担が増したことなどが影響し、一旦鈍化。そして、2017 年度については再び増加に転じた。
2018 年度の採用見込みについては「採用予定あり」が 34.7%と 3 割を超えており、海外大卒の外国人材の採用ニーズは依然高いことがうかがえる。

[2] 海外大学卒の外国人材の出身国(地域)
海外大学卒の外国人材の出身国(地域)について、今後重視する順に 5 つまで選んでもらった。最も多いのは前年調査に引き続き「東南アジア」。前年調査に比べ減少したが(75.6%→64.6%)、外国人留学生で増加が目立つ「ベトナム」は伸びており、国による濃淡が強まっている。「中国」は 46.3%で、前年調査(35.9%)より 10.4 ポイント増加し、「東南アジア」との差は縮まった。他に「韓国」「台湾」などもポイントが増え、アジアを中心に海外人材のニーズが高まっている様子がわかる。 

[3] 海外大学卒の外国人材に求める日本語力
海外大学卒の外国人社員に求める日本語コミュニケーション力について尋ねた。内定時にビジネス上級レベル以上(レベルの目安は P5 表参照)を求める企業は、文系 59.1%、理系 49.5%。入社後には、文系 79.1%、理系 73.3%と、ともに 7 割台へと増えている。日本の大学への留学生だけでなく、海外大学卒の外国人材に対しても、かなり高い水準の日本語力を求める企業が多いことがわかる。

3.外国人社員共通
[1] 外国人社員の受け入れと採用活動の課題
最後に、外国人社員の受け入れのために行っていることや、さまざまな課題、定着に向けての処方となるデータを紹介したい。
まず、外国人社員受け入れのための社内的な取り組みについて尋ねた。「いずれも実施しておらず、実施予定もない」が 38.2%、「いずれも実施していないが、今後は実施したい」が 36.1%と、合わせて 7 割を超える企業(74.3%)が現状では取り組みを行っていなかった。実施している取り組みで最も多いのは、「外国人社員への日本語コミュニケーション能力の研修」(13.0%)で、このデータからも日本語によるコミュニケーションが外国人材活用の鍵と捉えられていることがうかがえる。
採用活動における課題で多いのは、「社内の受け入れ体制が未整備」45.0%、「優秀な学生の能力判定が難しい」34.3%、「求める日本語コミュニケーション能力を有する人材が少ない」29.0%など。高度外国人材の採用が増えていく中で、手探りで進めている企業も少なくないようだ。

[2] 外国人社員の退職理由と活用課題
雇用していた外国人社員の退職理由を尋ねてみた。最も多かったのが「母国へ帰国するため」(49.8%)で、続いて「キャリアアップのため」33.2%、「仕事への適性の問題」19.6%などが挙がった。日本の企業文化や雇用慣行に起因する退職は比較的少ないものの、今後日本企業がグローバル化を押し進めて行く中で、越えなければならない壁だと言える。
外国人社員の活用に向けた課題は数字が分散しているが、回答が多いのは「海外人材を活用できる日本人管理者の不足」41.5%、「社内での日本語コミュニケーション能力の不足」34.7%、「キャリア形成の考え方と乖離」23.8%など。外国人社員を定着させ、さらに活躍してもらうためには、受け入れ体制を整備し、双方が納得できるキャリアパスを設定することが欠かせないと言える。


《調査概要》
調査対象 : 全国の主要企業 20,462 社
調査時期 : 2017 年 11 月 27 日 ~ 12 月 5 日
調査方法 : インターネット調査法
回答社数 : 611 社 
調査機関 : 株式会社ディスコ キャリタスリサーチ

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