農業経営における労働力不足への対策とITサービスの利用状況についての調査 

2018年01月30日

日本政策金融公庫(略称:日本公庫)農林水産事業は、平成 29 年7月に実施した「平成 29年上半期農業景況調査」において、農業経営における労働力不足への対策と IT サービス(注1)の利用状況について調査しました。
(注1) 生産履歴情報等を記録する経営・生産管理システムの他、農業機械の情報・制御システムや、センサー等を用いた環境制御システム等

労働力不足への対策は、「施設・設備・機械の増強」との回答が最も多く、設備投資により労働力不足を補うとの回答が多く見受けられました。
また、農業経営における IT サービスの利用状況については、およそ半数の農業経営体で既に IT サービスを利用していることがわかりました。さらに、IT サービスを利用している農業経営体は、売上高、農業所得(経常利益)の増加率が IT サービスを利用していない農業経営体に比べて高いことが判明し、IT サービスの利活用が農業の経営改善につながっていることがうかがえます。

調査結果のポイント


○ 労働力不足への対策は、「設備投資」や「労働条件の改善」

労働力不足への対策としてどのような取組みを検討しているか聞いたところ、「施設・設備・機械の増強」(54.9%)の回答が最も多く、およそ半数の経営体が設備投資により労働力不足を補うことを検討していることがわかりました。
「施設・設備・機械の増強」と回答した割合を業種別にみると、ブロイラー(71.4%)や畑作(66.2%)、養豚(62.9%)で特に高くなっています。

○ IT サービスを利用しているグループは高い成長性を示す

農業経営における IT サービスの利用状況を調査したところ、およそ半数の農業経営体が、既に IT サービスを利用している(注 2)ことがわかりました。特に、法人経営では、60.6%が IT サービスを利用しており(個人経営 43.5%)、法人経営において IT サービスの利用がより浸透していることがわかります。
(注 2) 別添調査報告書 P3 の質問「現在、どのような目的で IT サービスを利用していますか」において、「IT サービスを利用していない」以外を選択した者を「IT サービスを利用している」とした。

IT サービスを「利用している」経営体と「利用していない」経営体の売上高増加率を比較
すると、IT サービスを「利用している」グループの売上高増加率(21.4%)は「利用していない」グループ(17.0%)より 4.4 ポイント高くなっています。
また、農業所得(経常利益)増加率は、IT サービスを「利用している」グループ(100.8%)が「利用していない」グループ(39.7%)を 61.1 ポイント上回り、IT サービスを「利用している」経営体の方が、より高い成長性を示しています。
業種別にみると、売上高増加率、農業所得(経常利益)増加率のいずれも IT サービスを「利用している」グループの方が高くなったのは、施設野菜、施設花き、きのこ、酪農、肉用牛、ブロイラーの 6 業種で、主に施設利用により生産を行う業種です。

○ 「今後、IT サービス利用したい」が67.7%と増加見込み

今後利用したいITサービスの目的について聞いたところ、「ITサービスを利用する予定がない」との回答は 32.3%に留まり、67.7%が「今後 IT サービスを利用したい」となり、現在 ITサービスを「利用している」割合(49.4%)を 18.3 ポイント上回っていることから、今後の IT サービス利用の増加が見込まれます。今後利用したい IT サービスの目的は「コスト削減」(19.9%)が最多となり、次いで「生産量・品質の安定化」(19.3%)、「経営力向上」(18.1%)となりました。
「現在利用している IT サービスの目的」と「今後利用したい IT サービスの目的」の回答割合を比較したところ、「コスト削減」、「経営力向上」、「営業力・販売力の強化」、「経営人材の育成・能力向上」の項目において、「今後利用したい」とする割合がそれぞれ約4ポイント上回り、今後は、従来の生産性向上を主眼とした IT サービスの導入から、経営管理やマーケティングなどを含めた経営力そのものを強化する目的へ目が向けられていることがうかがえます。

調査概要


・調査時期:平成 29 年7月
・調査方法:往復はがきによる郵送アンケート調査
・調査対象:スーパーL資金又は農業改良資金のご融資先のうち21,315先
・有効回答数:5,116先(回収率:24.0%)
稲作(北海道):451、稲作(都府県): 1,371、畑作:382、露地野菜:401、 施設野菜:441、茶:116、果樹:266、施設花き:176、きのこ:74、酪農(北海道):195、酪農(都府県):222、肉用牛:356、養豚:224、採卵鶏:101、ブロイラー:58、その他:282

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