2016年度 中東進出日系企業実態調査 

2017年02月01日
ジェトロは2016年9月から11月にかけて、中東地域における日系企業活動の実態を把握し、その結果を広く提供することを目的に、アラブ首長国連邦(UAE)、サウジアラビア、トルコの3カ国の進出日系企業を対象にアンケート調査を実施しました。その結果を以下のとおり発表します。

【調査結果のポイント】

1.2016年は過半の企業が黒字だが、治安悪化・油価下落などの影響で、赤字企業も約2割。前年より営業見込み悪化が3割強。

2.2017年の業績は、 2016年に比して好転の見通し。

3.先行き不透明感あるも、市場規模・成長性は魅力。約6割の企業が事業を拡大方針。UAEはフリーゾーンや税制面など、投資環境に多くのメリット。

4.課題は法制度の未整備・不透明性、人件費などのコスト増、手続きの遅さなど。 トルコは不安定な政治・社会情勢が最大の懸念。


【調査結果詳細】

1.企業業績:2016年の黒字比率は5割強
・2016年の営業利益見込みを中東地域計でみると、52.9%の企業が「黒字」と回答。一方、「赤字」と回答した企業の割合は約2割(19.1%)。
・国別にみると、「黒字」と回答した企業の割合はUAE(55.4%)が最大、次いでサウジアラビアが53.8%。トルコ(47.2%)は3カ国中で最も低く、5割を下回った。

2.企業業績(前年比):2017年は「改善」の見通し
・営業利益見込み(前年比)を地域計でみると、前年より「改善」と回答した企業の割合が、2016年の30.2%から2017年は42.7%に増加。一方、「悪化」は33.2%から10.2%に低下。国別にみると、2017年の「改善」の割合が最も大きいのがトルコで49.1%、次いでサウジアラビアが45.0%。UAEは38.9%と相対的に低かった。
・営業利益が「改善」する主な理由としては、2016年・17年はいずれも、各国・地域計共に「現地市場での売上増加」を挙げる企業の割合が最多。次いで「輸出拡大による売上増加」を挙げる企業が多い。「悪化」する最大の理由は、各国・地域計共に「現地市場での売上減少」。

3.今後の事業展開:約6割の企業が事業拡大に意欲
・今後1~2年の事業展開の方向性は、各国・地域計共に半数以上の企業が「拡大」と回答。「現状維持」(3~4割)と合わせると、9割以上の企業が事業を拡大ないし現状維持の見通し。拡大する理由では、各国・地域計共に 「売上の増加」 、「成長性、潜在力の高さ」が2大要因となった。拡大する機能では 「販売機能」を挙げる企業が圧倒的に多かった。
・人員体制は、過去1年の変化・今後の予定のいずれも、地域計で4割以上の企業が現地従業員を増加。日本人従業員(駐在員)数については、7割以上の企業がほぼ横ばいだった。

4.投資環境の魅力:「市場規模・成長性」が最大の魅力
・地域計での投資環境の魅力としては、6割(60.4%)の企業が「市場規模・成長性」を挙げている他、「税制面でのメリット」(42.5%)や「フリーゾーン」(41.5%)を評価する企業も多い。
・国別では、サウジアラビアとトルコは「市場規模、成長性」が最多。UAEは「フリーゾーン」「税制面でのメリット」のほか「駐在員の生活環境」「安定した政治・社会情勢」など多くの魅力が挙がった。

5.投資環境の課題:行政面とコスト増、治安面が課題
・地域計での投資環境の課題としては、「法制度の未整備・不透明性」(60.0%)が最大、 「人件費の高騰」(55.2%)、「各種手続き等が遅い」(51.4%)が続いた。さらに4割以上の企業が「不安定な政治・社会情勢」 (42.9%)、 「各種手数料の高騰」(41.9%)を課題として挙げた。行政面とコスト増、治安面が主な課題となった。
・国別では、UAEは5割前後の企業が「人件費の高騰」、「各種手数料の高騰」、「不動産賃料の高騰」を挙げるなど 「コスト増」の影響が大きい。サウジアラビアは「法制度の未整備・不透明性」(88.1%)、「各種手続き等が遅い」(81.0%)など、行政面を始めに多くの課題。一方で、トルコはほぼ全ての企業(98.1%)が「不安定な政治・社会情勢」を課題として挙げた。


【調査概要】
調査方法・実施時期:アンケート調査、2016年9月5日~11月13日
アンケート送付先:中東3カ国の現地進出日系企業430社に回答を依頼し、212社より有効回答。有効回答率49.3%。
質問項目:(1)企業業績、(2)今後の事業展開の方向性、(3)投資環境のメリット・デメリット等

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[ジェトロ]
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