内部通報制度の整備状況に関するアンケート調査(企業の担当者対象) 

2017年07月31日
デロイト トーマツ リスクサービスは、「内部通報制度の整備状況に関するアンケート調査」の結果を公表します。本調査は、2017年5月に経営企画/総務/法務/内部監査/国際管理の担当者、および内部通報サービスに関心のある企業の担当者を対象に行い、221社から有効回答を得ました。

総括
ほぼすべての企業が通報窓口を設置済みで、足元ではグローバル内部通報制度への関心が広がっていることがわかりました。グローバル内部通報制度を検討している企業は7割を超え、前年の調査(47%)から大幅に増加しています。頻発している海外子会社などの不祥事に対応するためや、贈収賄防止、あるいは不正競争防止関連の法規制における課徴金の減免を期待するリスクマネジメント施策の一環として、グローバル内部通報制度に関心を寄せている企業の姿勢がうかがえます。また、当該制度において優先する地域は、東南アジア(57%)と中国(54%)が突出して高い割合となりました。

【主な回答結果】

1.通報窓口の設置状況
「通報窓口がある」との回答は、218社99%となり、2016年の調査(94%)より伸び、ほぼすべての企業が窓口を設置していることがわかりました(図表1)。外部窓口の設置は79%に上り、昨年(67%)より増加しました。外部窓口は組織内の人員ではないため通報者の安心感を高めるとともに、匿名通報を可能にすることから、多くの企業が採用していると考えられます(図表2)。

2. 通報のエスカレーションと対応の意思決定
内部通報窓口がないと回答した以外の企業に、重篤な内部通報対応の意思決定機関について聞いたところ、社外取締役、社外監査役がその意思決定機関に含まれる企業は65社30%にとどまり、昨年(27%)と近しい割合となりました(図表4)。これは、コーポレートガバナンス・コード(2015年6月1日、日本取引所グループ発行)の補充原則2-5①には、社外取締役の内部通報窓口への参画が記されているため、経営層の不正関与を考慮する場合、通報のエスカレーションと意思決定の仕組みには課題があるといえます。
他方、実際には通報の多くが人事評価や上司との人間関係に起因する個人的な不満の表明であるケースであり、個人的な不満の表明には、特に内部通報制度で強く求められる匿名での対応が困難になるといった矛盾が生じています。個人的な不満の表明に類する案件をすべて社外取締役や社外監査役に共有することは実務的ではないことが背景として考えられます。いわゆる公益通報につながるような不正の告発と個人的な不満の表明を明確に分割し、不正の告発は内部通報制度で対応し、不満の表明にはそれとは異なるプロセスで対応することを明確に宣言する等、制度を適切に設計し直す時期が到来しているといえます。

3.グローバル内部通報制度の対応検討
回答企業のうち、海外進出をしていると推定される企業[以下、海外進出推定企業(*)]132社のうち、海外からの通報を受け付ける窓口を有しているのは80社61%でした。海外からの内部通報窓口の設置は道半ばですが、昨年の50%からは設置が進んでいることも読み取れます(図表5)。

また、海外進出推定企業で、グローバル内部通報の設置を「検討している」企業は93社71%となり、昨年の59社47%に比して24ポイント上昇しました(図表6)。
M&Aで海外拠点を拡大する企業を含め、海外進出する日本企業は増えていますが、ガバナンスに課題を感じる企業は多くあります。海外拠点の経営や管理を日本からの駐在員ではなく現地の要員に移譲するケースが増え、不正行為を日本本社が検知するリスクマネジメント施策のひとつとして内部通報制度の導入を検討していると考えられます。2013年、2014年に各国独禁法および米国FCPA(海外腐敗行為防止法)による、日本企業に対する100億円単位の高額課徴金事案が発生しましたが、そうした不正競争防止関連規制および贈収賄防止関連規制に対応するリスクマネジメント施策のひとつとして内部通報制度に関心を寄せているようです。従来は拠点ごとに分散で内部通報制度を整備することに合理性がありましたが、これらの事案の発生により、グローバル統一の制度とすることで、ペナルティの軽減を図る統合のメリットが注目されています。今後、統合されたグローバル内部通報制度の整備が、海外進出を進める日本企業にとっての課題のひとつになるといえます。

*「海外進出推定企業」とは、アンケートにおいて海外子会社の存在を認める回答のいずれか1つを選択した企業を指す。今回調査では132社が該当した(2016年調査時は127社)。

4.グローバル内部通報制度を運営・導入する優先度の高い地域
海外進出推定企業のうち、グローバル内部通報制度を運営、もしくは今後導入する優先度が高い地域は、東南アジア57%、中国54%となり、続いて北米33%、EU25%、インド14%となりました(図表7)。東南アジアと中国が多い理由としては、製造業が多く進出していることが挙げられます。この結果から、内部通報制度の通報窓口の対応で必要となる主要な言語は、英語・中国語・東南アジア各国の言語であり、企業によってはヒンディー語、スペイン語、ポルトガル語、ロシア語のニーズもあると推察できます。

5.グローバル内部通報制度に係る課題となる各国の法規制等
グローバル内部通報制度を構築・導入・運営するうえで課題となる法規制を質問したところ、全体的に回答が分散しました(図表8)。日本企業は多様な法規制への事前対応が必要と考えており、各国法規制の専門家による支援が必要となると思われる結果となりました。
グローバルで内部通報制度を構築、導入、そして運営するためには、通報を発信する国の内部通報制度を制限する法規制や、通報が国境を越えて日本本社に移転することを制限する法規制をはじめとし、内部通報制度を導入するにあたり、様々な法規制があるため、それらを把握し事前に対応する必要があります。また、導入する国毎に、課題となる法規制を把握することが求められます。


【調査概要】
・対象者:デロイト トーマツ グループ主催のセミナーに申し込んだ企業の担当者のうち、経営企画/総務/法務/内部監査/国際管理 の属性を有する方、もしくはデロイト トーマツ リスクサービス株式会社の内部通報サービスの説明を依頼した企業の担当者
・実施期間:2017年5月19日~5月31日(2016年調査時は2016年6月~7月)
・回答方法:Webアンケートフォームへの入力
・有効回答数:221社(2016年調査時は230社)

詳しいリサーチ内容はネタ元へ
[デロイト トーマツ]
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