2017年度(第28回)カナダ進出日系企業実態調査 

2018年01月11日

ジェトロは、2017年10月3日から11月15日まで、カナダに進出している日系企業に対し、経営実態に関するアンケート調査を実施しました。

カナダ進出日系企業実態調査の結果のポイント


  • 営業黒字を見込む企業は前年比3.0ポイント増の75. 3%となり、米国進出日系企業と同様に6年連続で7割超を記録し、調査史上最長を更新した(資料-4頁)。
  • カナダ進出日系企業は、売り上げの約3分の2(67.0%)をカナダ国内市場が占めており(資料-14頁)、2017年のカナダ経済は3%台の成長を見込む中、日系企業の景況感を示すDI値(前期と比較した営業利益の「改善」-「悪化」)は、前年比8.7ポイント増の25.0と改善した。2018年も2%台の経済成長率が見込まれる中、2018年のDI値は34.0に上昇しており、業績悪化を見込む企業が減少している(資料-5頁)。
  • 過去1年間に現地従業員を「増加」と回答した企業は36.6%に達し、前年(28.2%)から8.4ポイント増加(資料-6頁)。今後1~2年の事業拡大を視野に入れる回答企業は、前年から9.5ポイント増の5割超(50.3%)に達しており、好調なカナダ市場や隣国の米国市場の見通しを受けて、事業拡大に積極的な姿勢を示す企業が増えている(資料-10頁)。
  • トルドー政権の政策に対する関心分野として、「通商」(78.4%)、「税制」(70.6%)、「外交」(62.1%)が上位3項目に挙がった。通商の中では、米国、メキシコとの間で再交渉が行われている「北米自由貿易協定(NAFTA)」への関心が7割弱(66.0%)で最も高く、続いて「日カナダFTA」(35.3%)や「環太平洋パートナーシップ(TPP)」(29.4%)と日本を含むFTAに関心を示した(資料-19頁)。
  • NAFTA再交渉により影響を受ける内容として、「通関・貿易円滑化・原産地規則」を挙げた企業は8割近く(77.5%)に達した(資料-20頁)。

カナダ進出日系企業実態調査の結果


1. 営業利益見込み:黒字を見込む企業は75.3%となり、前年から好転。6年連続の7割超で過去最長

  • カナダ進出日系企業の営業利益は、2017年は回答企業の75.3%が黒字を見込む。前年(72.3%)より3.0ポイント増加し、2012年度調査から6年連続で7割台の黒字比率を維持している(資料-4頁)。カナダ進出日系企業は、売り上げの約3分の2(67.0%)をカナダ国内市場が占めており(資料-14頁)、原油価格の前年比上昇と堅調な内需が実質GDP成長率を押し上げる中、進出日系企業の収益は改善した。
  • 景況感を示すDI値(前期と比較した営業利益の「改善」-「悪化」)は25.0となり、前年から8.7ポイント改善した。2017年の営業利益が前年比で「改善」するとの回答割合は47.4%となり、前年から6.3ポイント上昇し、営業利益が「悪化」するとの回答(22.4%)は2.4ポイント減少した。また、2018年の景況感の見通しを示すDI値は34.0で、2017年に比べて9.0ポイント上昇しており、営業利益の悪化を見込む企業は12.8%に減少している(資料-5頁)。

2. 今後の事業展開:事業拡大を視野に入れる企業は5割超(50.3%)で、前年から大きく上昇

  • 現地従業員数については、過去1年間に現地従業員を「増加」と回答した企業は36.6%となり、前年(28.2%)から8.4ポイント増加した。今後についても42.8%の企業が「増加」を予定している。日本人駐在員は総じて「横ばい」との回答になった(資料-6頁)。
  • 人材採用の取り組みについて、「人材紹介会社の活用」が約7割(69.1%)に達し、「派遣社員の正社員化」(41.0%)や「インターン受入」(34.5%)が続いた。最も有効な手段では、「人材紹介会社の活用」が44.4%に達した(資料-7頁)。人材育成では、「社内能力研修プログラムの提供」が61.7%、「社外能力研修プログラムの提供」が54.1%となった。最も有効な手段としては、「社内能力研修プログラムの提供」が42.6%を占めた(資料-8頁)。
  • 2017年の設備投資は、金額ベースで前年を上回る企業が33.6%で、前年比横ばいは56.8%だった。設備投資の目的は、「工場の合理化・効率化」(36.2%)や「AI、IoTへの投資による効率化」(30.2%)が上位に挙がった(資料-9頁)。
  • 今後1~2年の事業の拡大を視野に入れる回答企業は50.3%で、前年から9.5ポイント増加した。産業別でみると、製造業は前年(37.5%)から11.3ポイント増加し、非製造業は前年(43.6%)から8.5ポイント増加した。拡大する機能として、「販売」(64.9%)や「生産品(高付加価値品)」(36.4%)が主に挙がった(資料-10 頁)。
  • 新たな州に移転・新設する場合に重視する点については、「市場の大きさ」(60.7%)や「顧客との近接性」(59.3%)に続き、「物流・交通インフラ」(46.9%)、「雇用コスト」(42.1%)が上位を占めた。産業別では、製造業は「顧客との近接性」(59.2%)、非製造業は「市場の大きさ」(72.5%)が最も高かった。(資料-11 頁)。

3. 調達、販売:NAFTA域内の調達率は6割超、販売先はNAFTA向けが8割超

  • 原材料・部品の調達については、カナダ国内からの調達比率は34.7%(現地日系企業7.9%、地場企業24.3%、その他外資企業2.5%)となり、米国(24.2%)とメキシコ(2.5%)を合わせたNAFTA域内からの調達率は61.4%を占めた。アジアからの調達は、日本が23.9%を占め、中国が5.8%、ASEANが3.5%と続いた(資料-12頁)。
  • 販売先はカナダ国内が67.0%、米国が14.1%、メキシコが1.3%という分布となり、カナダを含むNAFTA向けは82.4%を占めた(資料-14頁)。
  • 全回答企業のうち米国またはメキシコとの輸出入においてNAFTAを利用する企業は、40.8%であった(資料-16頁)。このうち、輸出/輸入を行っている企業に限ると、NAFTAを利用する企業は66.7%となった。また、日本からの輸入でTPPの利用を検討中の企業は半数近く(47.5%)に上った(資料-17頁)。

4. 経営上の課題:「賃金の上昇」、「米ドル/カナダドル為替リスク」が引き続き課題

  • 経営上の課題(コスト上昇要因)については、「賃金(給与・賞与)の上昇」が63.6%と前年(46.4%)から17.2ポイント増えて筆頭要因となり、「米ドル/カナダドル為替リスク」が62.3%と続いた。規制面では、「環境規制」、「日本人駐在員のビザ」が前年に続き課題の上位に挙がった(資料-18頁)。

5. トルドー政権の政策に対する関心:「通商」、特に「NAFTA」が圧倒的

  • トルドー政権の政策に対する関心分野として、「通商」(78.4%)、「税制」(70.6%)、「外交」(62.1%)が上位3項目に挙がった。通商の中でも「NAFTA」への関心が66.0%(101社)と大きかった。続いて「日カナダFTA」(35.3%)、「TPP」(29.4%)と日本を含むFTAに関心を示した(資料-19頁)。

6. NAFTA再交渉による影響:原産地規則見直し、為替への影響等に関心

  • NAFTA再交渉により影響を受ける内容として、「通関・貿易円滑化・原産地規則」(77.5%)、「為替」(44.2%)、「物品市場アクセス」(37.7%)が上位に挙がった。業種別にみると、「通関・貿易円滑化・原産地規則」では輸送用機器(100%)、輸送用機器部品(100%)の関心が高かった。「通関・貿易円滑化・原産地規則」を選択した企業比率は、米国進出日系企業が同項目を選択した比率(68.3%)を9.2ポイント上回った(資料-20頁)。

調査概要


・調査方法・実施時期:アンケート調査・2017年10月3日~11月15日
・アンケート送付先:カナダ進出日系企業(製造業および非製造業)188社(回答企業数157社、有効回答率83.5%)
・質問項目:(1)企業業績、(2)今後の事業展開、(3)原材料の調達先および製品の販売先、(4)経営上の課題、(5)変化するビジネス環境への対応

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[ジェトロ]
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