企業の不正リスク調査白書(上場企業対象) 

2018年10月03日

デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社と有限責任監査法人トーマツは、「企業の不正リスク調査白書 Japan Fraud Survey 2018-2020」を発表しました。

本調査は上場企業3,653社を対象に、2018年7月までの不正の実態および不正への取り組みについてアンケート調査を実施し、303社から回答を得ています。調査は2006年より定期的に実施しており、今回で6回目の実施となります。

今回の調査では会計不正(架空売上、費用隠蔽等)、汚職(贈収賄、カルテル、談合、利益相反)、情報不正(品質・産地・信用情報等のデータ偽装、情報漏洩、インサイダー取引)、横領を不正として調査しています。また調査白書は主に不正リスクに対する社内外コミュニケーションの実態と不正の実態に関する章と不正への取り組みに関する章の2部構成となっています。

社内外コミュニケーションに関する項目では、著名企業による不正事案の続出が自社の経営における認識にも影響していることや、不正発覚時のリスクに対する認識が高まったとの回答が7割を超え、さらに高まる傾向にあることが分かりました。一方で、不正リスクに対する理解度・協力度では部門間で差があること、不正防止の風土として「問題の指摘を奨励する」ことが不十分、といった課題も明らかになりました。

不正の実態では過去3年間に不正事例があったと回答した企業は46.5%にのぼりました。このうち不正発覚後の対応として、不正事実を公表した企業は41.8%で、その中では「発覚直後または一部が明らかになった時点」での公表が23.4%で最多となりました。

不正への取り組みに関する項目では、不正の発生に伴う想定コストは平均で8.26億円となる一方で、不正防止のためのコストは平均で0.99億円にとどまることが明らかになりました。不正リスクへの対応・取り組みにおいては内部通報制度やポリシー制定は高い実施率となりました。一方で、内部通報の平均利用件数では回答企業の半数以上で年間0~5回にとどまっていることも分かりました。

主なポイント


1. 社内外コミュニケーションや不正の実態

■不正に対する認識
著名企業の不正事案の続出が自社の経営における認識にも影響しているとの回答が「非常に強い」「強い」「やや強い」の合計で40.3%。「不正事案が発覚した場合に経営や業績に影響するリスク」への認識が高まった、とする割合が約7割にのぼり、2020年にかけては高まる方向。

■不正リスク対策への社内での理解や協力
不正リスクが経営に与える影響や対策実行の重要性についての理解度と対策実行への協力度は同様の傾向。内部監査や法務・コンプライアンス部門が高く、営業・サービス、製造、研究開発の各部門が低い。

■不正防止に関する社内風土
「企業理念と行動指針の明文化」と「不正処罰方針の周知」は十分だが、「不正につながる問題の指摘の奨励」「上位役職者に対しても問題を提起できる」などの企業風土は不十分という傾向となった。

■不正の実態/発生件数と発生拠点
「過去3年間で不正事例あり」は46.5% であり、特に大企業、東証1 部上場、製造業と流通業では55 ~ 60%台と高い割合。不正事例は親会社での発生が半数弱を占めるが、国内関係会社も36%台と少なくはなく、親会社、国内・海外関係会社で幅広く発生している。

■不正発覚後の対応
不正事実を公表した企業は41.8%で、その中では「発覚直後または一部が明らかになった時点」での公表が23.4%で最多。「是正措置・再発防止策」は、「懲戒処分」のほか「業務・ルールの変更・周知」や「事業・取引のモニタリング強化」が挙がった。

2.不正への取り組み

■不正の発生に伴うコストと不正の防止に投じるべきコスト
不正の発生に伴う想定コストは平均で8.26億円にのぼる一方で、不正防止のためのコストは平均で0.99億円にとどまる。また、高額の発生対応コストを見込む企業が一定数いる一方で、全体としては低い水準にとどまる。

■不正リスクへの対応・取り組み
不正リスク対応として実施率が高い項目は内部通報制度、ポリシー制定、内部監査、J-SOX活用、防止研修。実施率が低い項目は人事施策、リスク評価、従業員意識調査、取引先選定・管理、発覚対応基準。

■内部通報制度
内部通報制度を利用した年間通報件数は年間平均で15.6件となるが、5 件以下が過半数となる。なお、もっとも割合が高いのはハラスメント関連の通報・相談となった。

調査概要


■調査対象範囲:全上場企業(今回の発送件数 3,653件)
■調査方法:全上場企業に対してアンケート調査票を送付し、回答を得る方式により実施(回答件数 303件)
■不正リスクに対する社内外コミュニケーションの実態と不正の実態:不正事例についての設問は回答企業のうち、過去3年間に不正が発覚したとの回答があった企業を集計している。集計対象となった不正事例は、過去3年間に発覚した不正のうち、損害金額が最大であった事例である。
■不正への取り組み:過去3年間に不正が発覚したかどうかにかかわらず、回答企業の全てを集計している。

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[デロイト トーマツ グループ]
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