2018年度 中東進出日系企業実態調査
2019年01月16日ジェトロは2018年9~10月にかけて、中東10カ国(アラブ首長国連邦(UAE)、サウジアラビア、トルコ、イラン、ヨルダン、イスラエル、クウェート、カタール、バーレーン、オマーン)に進出している日系企業に対し、経営実態に関するアンケート調査を実施しました。回答企業数は過去最多の255社となりました。調査結果を次のとおり発表します。
調査結果のポイント
- 2018年は過半の企業が黒字も、今後の見通しは「横ばい」が多数
- 好況が期待されるイスラエル、イランは米国制裁で厳しい見通し
- 投資環境は法制度の不備が課題も、市場性や対日感情の良さが魅力
調査結果概要
1. 【営業利益見通し】2018年は過半が黒字も、今後は「横ばい」が多数
- 2018年の業績は、対象国全体では過半(55.4%)の企業が黒字と回答、赤字企業は2割弱。黒字が6割超の国も多いが、イランでは約半数(47.4%)が赤字に。【資料9ページ】
- 2018年の営業利益を前年比で見ると、「横ばい」が多数(43.5%)ながら、イスラエルは経済の好調を背景に58.3%が「改善」、米国制裁の影響を受けるイランは「悪化」が52.6%に。改善も悪化も、全体としては「現地市場の売上」の増減が主因。【資料10、12~15ページ】。
- 2019年の営業利益(前年比)でも、全体では「横ばい」が47.4%で多数、「改善」は34.0%にとどまる。イスラエルは6割が「改善」、イランは6割が「悪化」と対照的な結果に。「現地市場の売上」の増減が最大の要因も、イランの「悪化」は他国政府(米国)の政策が影響大(75.0%)。【資料11、16、17ページ】
2. 【今後の事業展開】「拡大」は約4割にとどまり、「現状維持」が最多に
- 対象国全体では、「拡大」とした企業は42.4%にとどまり、「現状維持」が45.9%で多数となった。ただし、イスラエルは76.9%の企業が「拡大」するとし、イランでは「縮小」が6割という対照的な結果となった。【資料18ページ】
- 主な拡大する理由は「現地売上増」が最大で、他は「輸出拡大」と「市場の成長性」。拡大する機能は「販売機能」が72.9%で最大。【資料19~21ページ】
- 人員体制は、現地従業員も日本人従業員(駐在員)も「横ばい」が多数だが、イスラエルでは人員増、イランやカタールでは人員減の傾向が目立った。【資料22~25ページ】
3. 【投資環境】「法制度の不備」が最大の課題も、「市場性」や「対日感情の良さ」が魅力
- 対象国全体では、投資環境の魅力としては「市場規模・成長性」(52.6%)、課題としては「法制度の未整備・不透明性」がトップに(67.5%)。【資料26ページ】
- イラン(80.0%)、イスラエル(69.2%)、トルコ(64.2%)を始め、いずれの中東の国でも「対日感情の良さ」が魅力として挙がっていることが特徴の一つ。【資料29~31ページ】
- イラン(95.0%)、トルコ(81.1%)、イスラエル(50.0%)などの課題としては、「不安定な政治・社会情勢」も高い割合を占めた。【資料29~31ページ】
4. 【有望分野】「インフラ」「資源・エネルギー」が上位も、「新産業」なども有望視
- 今後の有望なビジネス分野としては、対象国全体では「インフラ」(62.8%)、「資源・エネルギー」(56.2%)が上位も、「新産業」(50.4%)や「消費市場」「サービス業」(ともに50.0%)も高い回答率を示した。【資料32ページ】
- イスラエル(100.0%)やバーレーン(80.0%)では、特に「新産業」(スタートアップ、IoT、AI等)が高い割合となった。【資料32ページ】
調査概要
調査方法・実施時期:アンケート調査・2018年9月10日~10月4日
アンケート送付先:445社(回答企業数255社(うち製造業66社、非製造業189社)、有効回答率57.3%)
[ジェトロ]