「生産技術者の未来」調査 

2014年06月19日
日本能率協会(JMA)は、生産技術者の意識を探り、競争力ある人材の育成とそのマネジメントのあり方を把握すべく、調査を実施した。本調査はグローバル化の進展とともに製造業における生産のあり方が大きく変わりつつあるなか、「生産技術者」の関心事がどこにあり、明日の(未来の)ものづくりをどう捉えているのか――こうしたトレンドを俯瞰することで、ものづくりの行方を洞察していく。生産技術者を対象とした調査はJMA 初。
この調査を実施した背景には、長きにわたり業績が良い製造業は、他社の追随を許さない量産化技術や情報を蓄積しており、こうした生産技術部門の存在が企業の業績を支えているという仮説があった。そこで社内における生産技術部門や技術者の役割や位置づけ、また戦略や組織風土との関わりを、今回の調査で明らかにした。

【調査結果の主なポイント】

1.生産技術部門の役割として、「コスト削減」は不動のテーマ、いまや「設備・工法開発」が主流。生産技術は、社内的にも認知された存在である

2.部門の課題は「競争力ある工場づくり」、「独創的生産技術の開発」、「グローバル化への対応」

3.開発・設計との関係に課題ありと認識しつつも、その理由は生産準備が多忙、設計側にコンカレントエンジニアリング(CE)の考え方がないと指摘

4.社内認知度の高い生産技術部門ほど、「生産技術“新3種の神器”(CE、生産技術開発、シミュレーション技術)」に積極的で、ものづくり基盤が強化されている

5.生産技術開発力が高い部門は、内製によって技術を創り、知財戦略で守るサイクルが回っている

6.生産技術開発力が高い企業は、人材の技術力、新技術への挑戦意欲が高く、結果として人づくりに貢献


【調査結果】

1.生産技術部門の役割として、「コスト削減」は不動のテーマ、いまや「設備・工法開発」が主流。生産技術は、社内的にも認知された存在である

生産技術部門の役割は「コスト低減」(28.0%)、「設備・工法開発」(19.9%)、「生産立ち上げ支援」(17.3%)と続く。コスト低減はいつの時代も必須テーマであるが、新たな製品開発に向けた攻めの動きとともに、海外生産に向けた支援活動も上位にあがっている。

回答者の 63.8%が、部門の社内認知度は高いと判断しており(「大変良く認知されている」21.8%+「まあまあ認知されている」42.0%)、「どちらとも言えない」16.0%、「あまり認知されていない」16.0%、「認知されていない」4.2%と自部門の置かれた立場を認識している。

その認知度を上げるための活動として、約7割が「生産技術部主導のプロジェクト活動実施」「新しい生産技術の開発」を展開している。


2.部門の課題は「競争力ある工場づくり」、「独創的生産技術の開発」、「グローバル化への対応」

生産技術部門の現在の課題は「競争力ある工場・工程づくり」(40.4%)がトップで、他の課題を大きく引き離した。今後5年先も同様にトップ(32.2%)の課題と認識。

2位以下の現在の課題は、「製品開発との協業」(14.3%)、「グローバル生産への対応」(13.7%)、「生産しやすい設計を行う」(12.4%)と、協業・連携、海外生産支援、効率的な設計と多岐にわたっている。

2位以下の5年後の課題は、「独創的生産技術の開発」(28.3%)と、新事業の展開を支えていきたいという意識も強い。「グローバル生産への対応」(20.2%)は回答者の5分の1が本格的なグローバル時代に向け関心を寄せており具体的な行動や施策に入ったものとみられる。

5年後の経営課題の変化は以下の通りで、5年後のテーマは約8割の企業が競争力ある工場・工程づくり、独創的生産技術の開発、グローバル生産への対応の3つのテーマに絞っている。

【5年後には“大きくなる”と予想する課題】
「独創的生産技術の開発」 19.8 ポイント増 [現在]8.5%→[5年後]28.3%
「グローバル生産への対応」 6.5 ポイント増 [現在]13.7%→[5年後]20.2%

【5年後には“解消される”と予想する課題】
「競争力ある工場・工程づくり」 8.2 ポイント減 [現在]40.4%→[5年後]32.2%
「生産しやすい設計を行うこと」 7.5 ポイント減 [現在]12.4%→[5年後]4.9%
「製品開発との協業」 6.2 ポイント減 [現在]14.3%→[5年後]8.1%

3.開発・設計との関係に課題ありと認識しつつも、その理由は生産準備が多忙、設計側に CE の考え方がないと指摘

「生産技術」と「開発・設計」との関係性を、回答者の約2割は良好とみているが(「大いにうまくいっている」2.0%+「まあまあうまくいっている」17.9%)、約4割は否定的な関係(「あまり上手くいっていない」30.3%+「うまくいっていない」9.8%)と認識している。「どちらとも言えない」(40.1%)も多数あり、日本のお家芸とも言われる“コンカレントエンジニアリング(CE)”が決してうまくいっているとはいえないことが明らかになった。

また、技術者自身は自己の位置づけを「ものづくりの流れが良く分かる」(30.9%)立場にあり、「コンカレントエンジニアリングの要」(27.7%)だと認識しており、技術者としての自信の表れがみえる。しかし一方では、「生産技術と生産の間で問題が発生しやすい」(17.3%)と現状を冷静にとらえている(図表4)。コンカレントエンジニアリングは日本のお家芸とも言えるが、その効果を認識しつつも、今日ではあまり上手く活動できていないと見られる。

その理由に「生産準備が多忙であるから」(29.0%)であると認識しつつも、「設計にコンカレンエンジニアリングの考え方がないから」(28.3%)と開発・設計部門への批判的な考えも多く、「生産技術力が低い」(22.1%)から設計に貢献できていないという反省する技術者も見受けられる。


4.社内認知度の高い生産技術部門ほど、「生産技術“新3種の神器”(CE、生産技術開発、シミュレーション技術)」に積極的で、ものづくり基盤が強化されている

社内での認知度が高い生産技術部門(社内認知度レベル別)ほど、良い製品づくりのための「コンカレントエンジニアリング(CE)」に積極的に取組む傾向が強い。

さらに、生産技術開発(工法・設備)にも積極的に取り組み、その満足度も高い。

シミュレーション技術は約7割の企業が拡大の方向で取り組み、新技術の導入と活用には当然であると認識している。

かつて、生産技術とは“個人知”“カタログ・エンジニアリング”“経験”が重要だと言われていたが、いまやグローバル化に伴う市場の変化、技術の進展とともに、「CE」「生産技術開発」「シミュレーション技術」がより重要な要素になってきた。これらは、ものづくり基盤を強化する時代の“新3種の神器”といえる。


5.生産技術開発力が高い部門は、内製によって技術を創り、知財戦略で守るサイクルが回っている

社内で認知度の低い生産技術部門は、自社の製品・技術の競争力に自信がもてない。

生産技術開発の役割に満足している部門ほど、工法や設備など内製比率も高く、かつ知財戦略(戦略的特許出願、ブラックボックス化など)にも取り組んでおり、“技術を創って守る“活動を展開している。


6.生産技術開発力が高い企業は、人材の技術力、新技術への挑戦意欲が高く、結果として人づくりに貢献

生産技術開発の役割に満足度が高い企業ほど、「十分技術力がある」(7.7%)、「まあまあ技術力がある」(48.7%)と、自社の人材がもつ技術力への評価も高い。

「技術は人がつくる」と言われるように、生産技術開発の役割への満足度が高ければ、「新技術への挑戦」(69.2%)する意欲も高い。



【調査概要】
調査時期:2014 年3月 25 日~4月 10 日
調査対象:JMA が配信する生産系メールマガジンの購読者である技術者 2,210 人を対象
調査方法:WEB 調査(電子メールによる回答)
回答数・回収率:307 件(13.9%)

その他、詳しいリサーチ内容はネタ元へ
[日本能率協会]
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