女子大生の日本酒アンケート調査(18歳~23歳の学生対象) 

2016年02月15日
昭和女子大学グローバルビジネス学部ビジネスデザイン学科平尾光司ゼミでは、どのようなタイプの日本酒が若い女性の嗜好に合うかを調査した。その結果を踏まえ、女性ファン層獲得に効果があると思われる戦略を提言した。

アンケート方式の調査で、女子大生は
1.果実酒やチューハイなど、飲みやすく度数の低いお酒を好む傾向があり、
2.日本酒を好んで飲む人は全体の8.9%と少なく、
3.「軽快でさらり」「甘い」「香りが高い」ものが好きという結果が出た。
 さらに、
4.「有名(ブランド)」「おしゃれ」「流行」「ファッション」に敏感で、
5.「価格」へのこだわりも強いことがわかった。

調査は現代ビジネス研究所・熊坂敏彦研究員と平尾ゼミとの共同研究で、昭和女子大学学生468人を対象に2015年11月に実施。今回の報告書では、若い女性ファン層の獲得には高品質化(味とにおいの改善)、低アルコール化、低価格化、ブランド戦略などの経営革新が重要で、日本酒と和食と組み合わせた宣伝活動、女子会などのイベント実施、日本酒や作法に関する情報発信などの具体的な戦略が必要だと提言している。

【調査結果】

〈「未成年グループ」対象〉
Q. 飲酒年齢制限を 20 歳から 18 歳に下げるべきか?

「飲酒年齢を引き下げるべき」と回答した割合が未成年者全体の 22.2%であったのに対して、「そうは思わない」41.8%、「どちらとも言えない」32.0%という回答者が合計で7 割を超えた。
「そうは思わない」と回答した人にその理由を聞くと、「健康に悪い」43.8%、「酔って乱れることが心配」20.3%、「経済的に自立していない」15.6%、「アルコール中毒が怖い」7.8%という順であった。

Q 20 歳になったら飲んでみたいアルコール飲料は?(2項目複数回答可)。また、日本酒に対するイメージは?
20 歳になったら飲んでみたいアルコール飲料で、回答が一番多かったものは「果実酒」47.7%、それに次いで「チューハイ」30.1%、「ワイン」26.1%、「日本酒」15.0%という順であった。未成年の女子大生は、アルコール度が低く、ジュース感覚で飲めて甘味を直に味わえるようなアルコール飲料を飲みたいと思う傾向にあるようだ。
未成年女子大生の日本酒に対するイメージは、「日本的」54.9%、「大人っぽい」28.8%、「ローカル」3.9%という結果であった。日本酒は、家族行事で正月などに祝い酒として飲む機会が多いので、「日本的」と思う回答が多かったと考えられる。「大人っぽい」と回答した理由は、日本酒は「おじさんが飲んでいるイメージ」が強いことによるものと思われる。

Q.今までに日本酒を飲んだことがあるか?
成人の女子大生で今までに日本酒を飲んだことがある人は 71.9%、飲んだことがない人は 26.2%であった。「成人グループ」では、日本酒の飲酒経験者は高いことがうかがわれる。

Q .日本酒は好きか?
日本酒が好きかどうかについては、「好き」18.8%、「どちらともいえない」46.6%、「嫌い」31.3%という結果であった(表4)。前問と合わせると、若い女性の日本酒への好みはまだ定着していないことがうかがわれる。

Q .好きなアルコール飲料は?(2項目複数回答可)
「成人グループ」の女子大生の好きなアルコール飲料は、「果実酒」59.4%、「チューハイ」41.5%、「ビール」22.0%、「ワイン」14.4%、「ハイボール」11.5%、「日本酒」8.9%、「ウィスキー」2.2%、「焼酎」0.3%という順であり、「日本酒」は低位である。「成人グループ」でも、お酒デビューをしたばかりのビギナーが多いので、「未成年グループ」同様、アルコール度が低く、ジュース感覚で飲める甘いアルコール飲料がより好まれる傾向にあるようだ。

〈「日本酒が嫌い」「どちらともいえない」回答者対象へ〉
Q 日本酒を好まない理由について
(複数回答可)
日本酒が「嫌い」「どちらともいえない」と回答した人にその理由を聞くと、「味が嫌い」52.0%、「匂いが嫌い」35.2%、「アルコール度数が高い」30.7%、「悪酔いや二日酔いするから」13.9%等が多かった。

〈「成人グループ」対象〉
Q .日本酒を飲む頻度は?

日本酒を飲む頻度は、「全く飲まない」40.3%、「年に数回」26.5%、「月に 1〜3 回」22.4%、「週に 1〜2 回」6.1%という結果であった。頻繁に日本酒を飲む人は少ないことがわかる。また、「好き」な人と「嫌い」な人とで違いがはっきりと出ている。「好き」な人は「月に 1〜3 回」が 52.5%と最も多く、「嫌い」な人は「全く飲まない」51.0%、「年に数回」30.6%が多くなっている。

Q .日本酒を飲む場所は?(2 項目複数回答可)
日本酒を飲む場所について、全体でみると「居酒屋」54.6%、「自宅」25.9%の 2項目が多かった。「好き」「嫌い」別でも全体と同様に「居酒屋」で飲む人の割合が最も多い。また「好き」な人は「自宅」で飲む人も 49.2%と高い。

Q .日本酒を飲むのは誰と飲むことが多いか?(2項目複数回答可)
日本酒を誰と飲むことが多いかについては、全体でみると、「家族と」40.9%、「友人たちと」35.8%、「自分 1 人で」8.6%という順であった。
「好き」「嫌い」別でも、「家族と」飲む人の割合が多い。特に日本酒を「好き」な人は 71.2%の人が家族と飲むと回答している。家族が日本酒を好きだと飲む機会が増え、自然に日本酒を好きになっていく傾向があることが窺える。また、日本酒を「好き」な人は、「自分一人で」飲む(23.7%)ことも多いようである。

Q .日本酒を飲むときの料理の味の好みは?(2項目複数回答可)
日本酒を飲むときの料理の味の好みについては、「塩辛いもの」35.1%、「さっぱりして淡白なもの」24.0%、「油っこく濃厚なもの」15.3%という結果になった。
前述のように、日本酒を飲む場所は「居酒屋」が最も多かったが、一般的に居酒屋で最初に注文する酒のおつまみは、「枝豆」「たこわさ」「チャンジャ」等、「塩辛いもの」が多いことが関係しているように思われる。なお、日本酒が「好き」な人は、「塩辛いもの」55.9%、「さっぱりして淡白なもの」44.1%「油っこく濃厚なもの」32.2%と、上記の傾向がより際立っている。

Q .日本酒を飲むときの温度は?(2項目複数回答可)
日本酒を飲むときの温度については、全体でみると「冷酒」36.7%、「常温」18.8%、「熱燗」14.7%という順になった。女子大生は総じて「冷たい日本酒」を好むようである。
「好き」「嫌い」別では、「嫌い」な人の多くは「冷酒」に偏っているのに対し、「好き」な人は「冷酒」以外にも「常温」(32.2%)、「熱かん」(23.7%)、「ぬる燗」(10.2%)等、幅広い温度で日本酒を楽しんでいることがわかる。

Q 日本酒を飲むときの器は?(2項目複数回答可)
日本酒を飲むときの器については、「さかずき・ぐい吞み」35.5%、「グラス」23.3%、「漆器」10.5%という順であった。「さかずき・ぐい吞み」が一番多いのは、居酒屋で飲む人が多く、居酒屋で出される器は「さかずき・ぐい吞み」が多いからであろう。「漆器」で飲む人も割合多いのは、自宅でお正月にお屠蘇をいただくことと関係しているのかもしれない。日本酒は多様な飲み方があるが、その器もまた多様にあり、全国の伝統的工芸品や日本文化と日本酒とのコラボレーションが期待される。

Q 日本酒を購入するときに重視するものは?(2項目複数回答可)
日本酒を購入するときに重視するものについては、「味」28.4%、「価格」17.9%、「蔵元や銘柄」17.6%の 3 項目が多かった。
「好き」な人は、「味」49.2%と「蔵元や銘柄」40.7%へのこだわりが際立っていることがわかる。

Q .普段購入するときの日本酒(720ml)の値段は?
普段購入するときの日本酒の値段については、「1,000 円~1,500 円」20.8%、「1,500円~2,000 円」12.8%、「1,000 円未満」12.5%と、総じて「低価格指向」が強い。ただし、「好き」な人は、「2,000 円~3,000 円」(13.6%)と高額な商品も購入しているようだ。

Q .日本酒をどこで購入するか?(2項目複数回答可)
日本酒をどこで購入するかについては、全体では「スーパー」25.9%、「酒専門店」21.1%、「コンビニ」12.8%という順であった。「好き」な人は「酒専門店」(39.0%)で購入する人が最も多くなっている。

Q .どのような味や香りの日本酒が好きか?(2項目複数回答可)
どのような味や香りの日本酒が好きかについては、「軽快でさらりとしたもの」47.0%、が最も多く、次いで「甘口・やや甘口」18.8%や「香りの高いもの」10.5%が多かった。
女子大生は、「好き」な人でも「嫌い」な人でも「さっぱり」系や「甘い」系を好む傾向があるようだ。
また、「好き」な人と「嫌い」な人で大きく差が出た。「嫌い」な人は、「軽快でさらりとしたもの」41.8%、「甘口・やや甘口」13.3%と回答した人が多いのに対し、「好き」な人は上記 2 項目だけでなく、「香り高いもの」28.8%、「辛口・やや辛口」16.9%、「濃醇でコクがあるもの」13.6%等も好んでおり、好みに「多様性」がある。

〈全員対象〉
Q これから飲んでみたい日本酒はどのようなものですか?
(複数回答可)
これから飲んでみたい日本酒については、全体では「有名な銘柄のもの」と答えた人が48.7%と最も多く、続いて「日本酒を使ったカクテル」31.6%、「品評会で受賞したもの」23.1%、「アルコール度数の低いもの」17.5%という順であった。「知名度」や「品質」はもちろんのこと、女子大生にとっては「飲みやすさ」も重視される。
「好き」「嫌い」別では、日本酒が「好き」な人は、「有名銘柄」(ブランド)指向が強く、「嫌い」と回答した人は、日本酒を使ったカクテルやアルコール度数の低い日本酒等を好むようである。
また、ブランド指向に関しては、従来のマスマーケットを対象とした「ナショナルブランド」だけではなく、多様で、個性的で、地域性が強い「ローカルブランド」への指向もうかがわれる。

Q どのようなタイプの酒蔵の日本酒に惹かれるか?(2項目複数回答可)
どのようなタイプの酒蔵の日本酒に惹かれるかについて尋ねたところ、「高品質追求、個性派」(57.7%)が最も多く、次いで「観光酒蔵」(19.7%)、「日本文化志向・異文化コラボレーション志向」(17.7%)、「まつり・イベント志向」(12.4%)、「国際化(輸出)志向」(7.3%)という順であった。
「好き」「嫌い」別にみると、「好き」な人は、「高品質追求・個性派」(83.1%)が圧倒的に多く、「嫌い」な人は、「高品質追求・個性派」の他に「まつり・イベント」(21.4%)、「日本文化志向・異文化コラボレーション」(20.4%)、「観光酒蔵」(18.4%)と、その他の項目も多い。
このように見てくると、「嫌い」な人に日本酒を「好き」になってもらうためには、「高品質化」「個性化」といった「ものづくり」面での革新だけではなく、「観光」や「まつり・イベント」等の「ことづくり」面での革新も重要であると思われる。

Q 女性や若い人たちがもっと日本酒を飲むようになるために、どのようなことが必要だと思うか?(複数回答可)
女性や若者が日本酒をもっと飲むようになるために必要なことについては、「料理の味にあった日本酒を教えてもらう」(52.4%)と答えた人が最も多かった。日本酒を料理と共に楽しみたいと考える人が多いようだ。次が、「日本酒のイベントや女子会」(43.4%)である。日本酒のイベントについては、女性向けのものを含めて増加傾向にあるが、イベントが開催されていることを知らない、知っていても実際に行くきっかけがないのではないかと思われる。「インターネットやSNSでの情報」(22.9%)という回答も多かったが、まさに、女性や若者向けの「情報発信」が重要である。さらに、「和食と関連したプロモーション」(21.8%)、「日本酒を飲む作法を教えてもらう」(13.0%)等もあげられている。


【調査概要】
調査対象 昭和女子大学に在学する 18歳~23歳の学生
調査時期 2015 年 11 月
調査方法 学内にてアンケート用紙を配布・回収
回答者数 468 名

詳しいリサーチ内容はネタ元へ
[昭和女子大学]
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